ストレージ階層見直し — アクセスパターン分析による継続的最適化
アクセスパターン分析に基づく階層移行、不要スナップショットの整理を解説します。
コスト改善戦略の最後の柱は、時間の経過とともに実際のアクセスパターンが変化した 既存データに対して、ストレージ階層を継続的に見直すことです。
SAA レベル:基礎概念
ストレージ階層見直しの基本的な考え方
- データは時間の経過とともに「アクセス頻度が低下する」傾向がある(ログ、古い注文データ等)
- この傾向に合わせて、より安価なストレージクラスへ段階的に移行することでコストを削減する
SAA 試験のポイント
S3ライフサイクルポリシーを一度設定したら終わりではなく、実際のアクセスパターンの変化に合わせて定期的にルールを見直すべきという基本姿勢がSAAでも問われることがあります。
SAP レベル:高度な設計シナリオ
S3 Storage Lensによるアクセスパターン分析
SAP 試験のポイント
既存のライフサイクルポリシーが最適かどうかを判断するには、実際のアクセスパターンをデータに基づいて把握する必要があります。S3 Storage Lensを使うと、組織全体(複数アカウント・複数バケット横断)のストレージ使用状況、アクセスパターン、コスト効率の指標を可視化でき、「このバケットは想定よりアクセス頻度が低いためGlacierへの早期移行が可能」といった、データドリブンな見直し判断が可能になります。
不要スナップショットの整理
SAP 試験のポイント
EBSスナップショットやRDSスナップショットは、増分バックアップ方式のため個々のスナップショット自体は安価に見えますが、世代管理されずに蓄積し続けると、トータルのストレージコストが無視できない規模になります。SAPレベルでは、AWS BackupやData Lifecycle Manager (DLM) を使い、保持世代数・保持期間を明示的にポリシーとして定義し、古いスナップショットを自動的に削除する仕組みを既存環境に対しても導入することが問われます。
設計上の落とし穴
「スナップショットは何かあったときのために全部残しておくべき」という考え方は、コスト面で非効率です。SAPでは、コンプライアンス要件や実際の復旧要件(RPO)から逆算した、合理的な保持期間・世代数を定義することが求められます。無制限の保持は、真に必要な保護レベルを超えた過剰なコストを生みます。
既存EBSボリュームの見直し(gp2からgp3への移行)
- 2-5で解説したgp2からgp3への移行は、新規構築時だけでなく、既存の稼働中システムに対しても無停止で実施可能(ボリュームタイプの変更はオンラインで行える)
- 定期的な棚卸しの一環として、既存の全EBSボリュームを対象にgp2からgp3への一括移行を計画的に実施することで、追加のコスト削減が見込める
継続的改善サイクルへの統合
- ストレージ階層見直しは単発のプロジェクトではなく、Well-Architected Toolのコスト最適化レビュー(3-2で解説した考え方と同様)に組み込み、定期的に実施するプロセスとして運用することが、ドメイン3全体のテーマである「継続的改善」の実践になる
まとめ
- SAA: アクセスパターンの変化に応じたストレージ階層見直しの基本姿勢を理解する。
- SAP: S3 Storage Lensによるデータドリブンな見直し、スナップショットの世代管理ポリシー、gp2→gp3移行を含む継続的な最適化サイクルの構築ができる。
ここまでで 3-5 コスト改善戦略 の全3記事、そして ドメイン3:既存ソリューションの継続的改善 の全体(17記事)が完了しました。次は ドメイン4:ワークロードの移行とモダナイゼーションの加速 に進みましょうか?